企画発案者・坂本有子さんインタビュー
自社の明太子だけを
好きになってもらっても
業界の未来は照らせない
今回のプロジェクトを企画・発案した「島本」の坂本有子さんに
企画が生まれたきっかけや今後目指していることを聞きました。
今回の企画を思いついたきっかけは。
坂本「島本」としては、これまでに2度、クラウドファンディングで稀少な明太子を作る機会をいただきました。1回目は「知る人ぞ知る、北海道の噴火湾で獲れた鮮度抜群のたらこで作る幻の明太子」、2回目は「純米 無濾過生原酒で仕込む辛子明太子」です。どちらも多くの方からご支援をいただき、できあがった明太子に対してもうれしいお声をたくさんいただきました。
明太子の奥深さや可能性を少しずつお伝えしていくためにもここで終わらせるわけにはいかない、次は何をしようかなと考えてきました。そして、せっかくだったらうち以外の明太子のおいしさも知ってもらいたいと思ったんです。
他社の明太子のおいしさもですか?
坂本そうです。明太子といえば、博多の代表的なグルメですが、博多=明太子というイメージを持っていたいているんじゃないかと思うんです。でも、実は博多に200社以上の明太子メーカーがあることや、それぞれに個性があるということまではなかなか知られていないのが現状なんです。
200社も!
坂本はい、ご存知ない方がほとんどだと思います。明太子ってふくやさんがレシピを公開して広まったんですが、良くも悪くも、一緒に何かすることがそんなになかったんですよ。だからこそそれぞれに個性豊かな明太子を生み出しているんですが、これからは業界全体がワンチームとなってやっていけることもあるんじゃないかなと。
いつもはライバルでも明太子を盛り上げるために
ワンチームになれるのでは
なるほど。そんな考え方から始まった今回のプロジェクトはどんな内容に?
坂本今回は、博多に本拠地を置きつつ、県外の方にも知られている人気メーカーの「稚加榮」さんと「椒房庵」さんをお迎えして、3社の明太子のおいしさを知ろうという企画です。
食べ比べできるとは贅沢な試みですね!今回の2社を選んだ基準は?
坂本まず第一に、「島本」の明太子と同様、国産のたらこを使った明太子を提供できるという点です。そして、「稚加榮」さんは料亭、「椒房庵」さんは元々は醤油屋さんから始まった「久原本家」グループという基軸があることからお声をかけさせていただきました。最初に思いついた時は「この3つだったら絶対全然違うおいしさだからお客様に喜んでもらえそう!」と胸が高鳴ったのですが、徐々に「こんなことって実現できるんだろうか…」という不安が頭をもたげてきました…(笑)。
実現できないかもしれなかった理由とは?
坂本やはり、前例がなかったからですね。明太子メーカー同士のコラボだったり、同じプロジェクトに参加するということもあまりなくて。私は業界に入って数年の新参者だから知らないだけで、何かしら理由があるのだろうから、今回も難しいのかなという漠然とした不安があったんです(笑)。
それでも挑戦したんですね。
坂本はい、過去2回のクラウドファンディングで、これまで島本の明太子を知らなかった方にも知っていただき、「おいしい」と褒めていただく機会にも恵まれ、「これは業界にとっても有意義なことだ」という確信があったんです。
業界全体にとってですか?
坂本そうなんです。実は明太子業界って緩やかに右下がりなんですよ。昔は、「福岡土産といえば明太子」だったから、出張土産も手土産もお中元・お歳暮も必ず明太子という方が多かったんですが、最近はいろんな名物が誕生してきた背景もあって、残念ながらお持たせや贈答だけでは市場が縮小していくばかりという印象でした。明太子メーカー各社もそれは感じていて、以前は1本物と切れ子ぐらいだったのが、今はマヨネーズと混ぜたり、いわしに挟んだり、いろんな食べ方を提案するなど、日常的に楽しんでもらう提案も広がっています。それはそれでいいことなんです。だけど、明太子を作っている立場としては、「せっかくのおいしい明太子だからそのままでも味わってほしい」という気持ちも捨てきれなくて。食べる機会が減っているだけで、明太子好きの人口は減っていないと思うんです。だからこれを機に、おいしさを再発見してもらえたり、「好きな明太子が増えたよ」と言っていただけたらこんなにうれしいことはないなと。
だけど、明太子を作っている立場としては、「せっかくのおいしい明太子だからそのままでも味わってほしい」という気持ちも捨てきれなくて。食べる機会が減っているだけで、明太子好きの人口は減っていないと思うんです。だからこれを機に、おいしさを再発見してもらえたり、「好きな明太子が増えたよ」と言っていただけたらこんなにうれしいことはないなと。
ありそうでなかった
明太子同士の切磋琢磨を見守って愛してほしい
なるほど、実際声をかけた時の2社の反応は?
坂本こわごわでしたが、2社とも経営トップの方々にお話しできる機会をいただいたんです。すると皆さん「こういうチャレンジは業界の未来を広げていくためにも必要」と言ってくださったんです。その時はもう本当に興奮したというか、震えたというか、とにかく始まる前から感動でした(笑)。「稚加榮」さんは福岡でも老舗の高級料亭で私たちからすると畏れ多く、敷居をまたいでいいのかなっていうぐらいの神々しい存在なんです。そして「椒房庵」さんも「茅乃舎」のだしなどで全国的に知られている押しも押されもせぬメーカーです。言い出しておきながら「うちなんかがおこがましいこと言ってすみません」という気持ちになることもありました。でも優しく背中を押していただいたので、胸を借りて、企画を成功させよう!といい緊張感を持つことができました。
企画には投票もありますが、仲が悪くなったりしませんか?
坂本そこは最後までどうしようかなと迷ったところだったのですが、せっかく「うちがいちばんおいしいぞ!」と胸を張れる明太子を出し合うんだから、食べてくださった方の反応やお声も聞かせていただきたいなという気持ちがあったんです。だから「これは○でそれ以外は×」という排他的な総選挙ではなく、「私の好みはコレ!」という感じで、食べてくださる皆さんがそれぞれに好きな明太子を支持して、他を否定することはしない、それこそアイドルの総選挙みたいにお祭りとして楽しめたらいいなと思っています。「稚加榮」さんや「椒房庵」さんもたくさんのファンの方がいらっしゃるので、これで1位になれなかったからどうこうということもないのですが、やはりもちろん「1番を目指すぞ」といい意味でのモチベーションは持っていただけています。各社の匠が究極の明太子を作るので食べ応えのあるものができるはずです!
明太子史上初となる頂上決戦、楽しみですね。
坂本はい、ぜひ期待してください。それから今回のプロジェクトにはナビゲーターをお迎えする予定なんです。というのも、提案した「島本」も総選挙に参加するのできちんとフラットな目で見ていただく方が必要だと考え、あるゲストを考えているんです。次回は、その方に登場していただくのでどうぞご期待ください!
だと考え、あるゲストを考えているんです。次回は、その方に登場していただくのでどうぞご期待ください!